大学等講師活動

チャマテックでは、大学生や中小企業、海外研修生を対象に講義しています。
以下、ある大学の工学部の学生に熱力学の基本を講義したので、その内容を記載します。
大学からの要請は、学生に“エンタルピとエントロピ”を理解させてほしいということでした。


熱工学実験におけるエンタルピとエントロピの講義

エンタルピはエネルギーを現わすが、エントロピは熱力学で使用された用語であるものの、化学、生物学、ひいては文学(哲学)でも使われるようになり、自然はエントロピが増大する方向に進むなどと、末法思想用語に使われることもあります。
これらの用語を学生に理解してもらえるよう、蒸気エンジンを利用したオープンサイクルを考え、試作しました。
その外観の写真が下記です。

蒸気機関による熱利用システム

この装置で実際に水を沸騰させて飽和蒸気から過熱蒸気へと変化させ、過熱蒸気によって蒸気エンジンを回転させ、その回転力でモータを回し発電させた。
学生は、モータを逆回転させて、発電できたことに興味を示すと思ったが、最も興味を示したのはエンジンが蒸気によって回転し始めたときであった。
ここで私は熱エネルギーが動力に変換されていることを動力計算と蒸気エンジンで入口のエンタルピを使って得たエネルギー落差を求めることでこれらを比較し、エンタルピはその位置における全エネルギーを現わしていることを説明した。
エントロピは、エンジンの回転に使用されたのちの凝縮水の温度とエンジン入口の蒸気温度とエントロピの定義式からエントロピが温度の逆数であることで温度が低くなるとエントロピが大きい事を説明して、エントロピが大きいということはエネルギーの利用価値が低い事を説明した。
エントロピとエンタルピはそれぞれ熱力学第一法則と第二法則から導かれたものであるが、エントロピは温度が高温側から低温側に伝わるという自然法則を定量化した熱力学発の用語であり、自然の摂理を理解する重要な概念である。
エントロピが増大するということは、変化の過程でエントロピ自身は増大もするし、現象もするが、全体として自然は決まった方向に進む、覆水盆に返らず、時間も逆戻りしないと説明したことで、このとりつきにくいエントロピの概念も理解してもらえた。
熱力学は、工学部の学生からはどうもとっつきにくい学問らしい。
しかし、ともに蒸気機関を動かすという実験を通じて、システムの意味も理解してもらい、大学で研さんしてきた断片的な知識(ある意味では専門知識)がシステムを通じて生かされる楽しさを味わってもらえたとも感じた。
一つ一つの専門知識は、使い方を知らなければ生かされない。
これは、チャマテックが総合エンジニアリングの重要性を強調する理由でもある。